2012年5月3日木曜日

アヤックス連覇!それとちょっと来季について

アヤックスがVVVフェンロを2-0で破り、1試合を残してエールディヴィジ連覇を決めました。


2得点をあげたのはシーム・デ・ヨング。彼は去年の最終節、優勝がかかったトゥエンテ戦でも2得点。来シーズンのキャプテンの噂もある"False No.9"が、決めるべきときに決めてくれました。前節までの戦いぶりでほぼ優勝は確定しており、また失礼な言い方になってしまうかもしれませんが相手がフェンロということもあり、去年のトゥエンテ戦のような異状な緊張感はありませんでした。ファンにとっても去年の優勝のほうが嬉しかったでしょうが、デ・ブール監督は今シーズン起こったことを考えると今年の優勝のほうが嬉しい、と語っています。



で、その「今年起こったこと」ですが、アヤックスにとって今年は苦難のシーズンでした。


まずは怪我人。序盤はフェルトンゲンを欠いてスタート、両サイドバックのファン・デル・ヴィールとボイレセンも長期離脱、新加入のシグトールソンとブーリフテルも怪我、挙句の果てにはシームやヤンセンも抜ける時期があったり、スレイマニもシーズン後半を棒に振ったり。結局シーズン開始当初のスターティングメンバーの半分以上が離脱している状態が常態化する中で、シーズン通して怪我なく過ごせたのはキーパーのフェルメールと、アニタ、エリクセンだけでしょうか。

次に、チャンピオンズリーグの敗退。ヤンセン・ブーリフテル・シグトールソンという効果的な補強ができ、また多くの若手選手が成長したこともあり、チャンピオンズリーグではレアルマドリードに次ぐ2位でグループステージを突破できるのではないか、という見方が強かったと思います。リヨンもいいチームだけど、今年のアヤックスならいけるだろうと。実際、アヤックスは最終節までに得失点差でリヨンから優位に立っており、突破が濃厚でした。しかしレアル相手に善戦をしたアヤックスが決めたと思われた2ゴールが誤審により取り消し。そして八百長疑惑まで出たリヨンの7-1での勝利。悪夢のような敗退になってしましました。

また、今シーズンの大きな問題といえば、やはりクラブ運営のミスマネジメント。クライフのダービッツに対する人種差別発言があり、その後クライフがいない場でクライフと犬猿の仲のルイ・ファン・ハールをクラブGMに迎える決定がなされたことで、クライフがクラブを訴えるにまで至りました。結局、クライフを含めた全員が総辞職。株主との話し合いが行われたり、シーズン中盤はクラブを不穏な空気が取り巻いていました。


そんな中、デ・ブール監督は頑固とも見えるようなやり方でチームを導きました。相手が誰であろうと、誰がピッチに立っていようと、ミケルス、クライフといった偉人たちが作り上げてきた伝統のポゼッションサッカーを絶対に崩さず、若手もうまく起用しながら、冬の補強なしでシーズンを乗り切りました。時としてその頑固さは批判の対象になることもありましたが、シーズン途中からアニタをアンカーに置き、ボールポゼッション時には3-4-3、守備中には4-3-3というように形を変える流動的でモダンなフットボールがチームに根付き、一気に波に乗った感があります。怪我人の続出で結局アニタがアンカーに落ち着いた、という不可抗力的な側面はありますが、デ・ブールの指導が0だったわけではないでしょう。


また、ユースチームが目覚しい活躍を見せたことも、大きな収穫でした。アヤックスユースはヨーロッパの強豪クラブのユースチームが戦うNextGenシリーズにおいて、バルセロナやリバプールのユースをいとも容易く退け、決勝まで進出。結局決勝ではインテルユースにPK戦で敗れてしまいましたが、ダフィー・クラーセン、ヴィクトール・フィッシャー、ヨエル・フェルトマン、ステファノ・デンスウィル、レスリー・デ・サといった有望な選手の活躍はヨーロッパで大きな話題になりました。特にクラーセンは日本のサッカー雑誌でも将来のアヤックスを担う存在として取り上げられた逸材。またフィッシャーは未だにトップチームデビューを果たしていないものの、すでにマンチェスター・ユナイテッドが興味を持っているとも噂される17歳。昨シーズン途中のデ・ブール監督就任後、ユースチームはより個人に焦点を当てたトレーニングを行なっていると言われています。(詳しくはこの記事とかが興味深いです(英語))


「我々は自分たちのビジョンに忠実であり続けた」


こうデ・ブールは語ります。2位につけるフェイエノールトのクーマン監督も、デ・ブールは「タイトルに値する」と賞賛しています。


とにかく、苦しいシーズンだった分、嬉しい二連覇になりました。


二連覇はクラブの財政面を安定させる効果も持ちます。来シーズンはNECからデンマーク代表ラッセ・シェーネの加入がすでに決まっており、フェルトンゲンの後釜としてAZのモイサンデルがターゲットとなっている模様。同じくAZの左サイドバックのシモン・ポールセンについては移籍金0での獲得が可能なため、ターゲットになっています。また、ヘーレンフェーンのウイング、ルシアノ・ナルシンも長い間ターゲットになっており、より一層の戦力強化が図られそうです。


フェルトンゲンはビッグクラブへの移籍がほぼ確実、オーイェルは引退、アイサティもリーガ・エスパニョーラ行きを望んでいるという報道がありました。ブリキンも契約延長のオプションを行使しない模様で、チームにフィットしていないロデイロも移籍が濃厚と噂されます。ただ、バレンシアとの交渉を続けるファン・デル・ヴィールは残留に傾いているという噂もあります。ヤンセンについては、年齢的な衰えもあり、やはり昨年のリーグ年間MVPと言えどもスターティングメンバーを約束されているわけではないということを自覚しているようで、このことについてデ・ブールと少し話をしてから去就を決めるとのこと。もっとも、ヤンセン自身はできることなら残りたいと言っており、話し合いも「スターティング・スポットを要求するようなものではないし、10分も話せば十分。自分がチームにとって重要だということがフランクから確認できればそれでいい」というようなことを言っているので、できれば残って欲しいなと思います。


スレイマニは年俸の高さがネックと長年言われていますが、減俸で契約更新交渉を行う模様。ただ、ナルシンが来て、シグトールソンやブーリフテルが万全の状態になった場合、中盤をアニタ・ヤンセン・デヨング(もしくはシェーネ)で構成して、エリクセンをウイングに出すという起用もありえたりするので、もしかしたらスレイマニは放出もありえるかもしれませんね。


スピッツ(センターフォワード)の位置にも、監督は若手の有望なプレイヤーを獲りたいと言っているようなので、ポジション争いはより一層厳しくなることが予想されます。キャプテンを噂されるシームは中盤の方がやりやすいと言っているようですが、テクニック面で他の選手より特別優れているわけではなく、かといって彼の得点感覚と勝負強さは捨て難いし…といったように、デ・ブールにとっても嬉しい悩みが増えることになるかもしれません。



個人的には今シーズン好調でチームを引っ張ったアニタやシームは変わらずレギュラーで居て欲しいし、若手にもチャンスを与えたい(もうちょっと言うとロデイロに残ってプレーしてほしいけど、ちょっと無理かな…)。ただ、ヨーロッパで勝つためには今のメンバーの中で誰かをベンチに座らせる決断も重要。来シーズンこそがデ・ブールの手腕が試される1年になるのでは。


最終節フィテッセ戦は若手主体になりそうなので(VVV戦がフェルトンゲンのラストゲームだったとデ・ブールが明言)、来季を占う意味でも楽しみな一戦。