2013年4月21日日曜日

3連覇に近づくアヤックスと"Danish Dynamites"


アヤックスはエールディビジ第31節を終え、勝ち点67で首位に立ちます。2位PSVは勝ち点63、今晩のフィテッセ対フェイエノールト戦でフィテッセが勝った場合、フィテッセが勝ち点64で2位に踊り出る可能性もあります。


開幕当初はPSVが圧倒的な戦力を持っていると思われており、実際ものすごい勢いで得点を重ねていたPSVですが、大事な局面で守備の脆さを見せてしまい、結局未だに2敗を保つアヤックスが首位を守る展開になっています。


第30節のアヤックス対PSVの頂上決戦は3-2でアヤックスの勝利に終わり、この結果アヤックスは優勝をグッと引き寄せたことになりました。31節のヘーレンフェーン戦は1-1の引き分けに終わったものの、残り3試合NAC、ヴィレムII、フローニンゲンと格下相手の試合が続くため、よほどの波乱がなければこのままアヤックスの優勝となりそうです。


今シーズンのアヤックスでセンセーショナルな活躍をしたのは、間違いなくヴィクトール・フィッシャー。デビューシーズンながらリーグ戦8ゴールを記録し、18歳ながらチームの主軸として活躍しています。特にNEC戦でのこのスーパーゴール。






同じくデンマーク出身のクリスチャン・エリクセンは、好調・不調の波は激しいものの、CLやPSV戦など重要な局面で活躍し、ヘラクレス・アルメロ戦ではフィッシャーに負けじとスーパーゴールを決めてみせました。




若く、才能あふれるこの二人に注目が集まっています。エリクセンは今夏の移籍を特集した雑誌では必ずといっていいほど名前が出てきます。


しかし、今シーズン素晴らしい活躍を見せているデンマーク人が、あと二人います。この二人の活躍がなければ、今アヤックスが首位に立っていることはないでしょう。


一人目は、ラッセ・シェーネ。NECから今シーズン加入した26歳は、今シーズン29試合に出場し6ゴールを決めています。中盤の攻撃的な位置が主戦場ですが、守備的MFを務めることもでき、また右ウイングでのプレーもできるユーティリティープレーヤー。正確な技術から中盤のポゼッションに貢献し、粋なパスでゴールをアシストする。そして決定的な場面で思いきりの良いミドルシュートからゴールを奪えるという、状況判断に優れたインテリジェントで頼もしい選手です。

Lasse Schone

シェーネはデンマーク出身ですが、16歳の時からヘーレンフェーンのユースに所属。しかしヘーレンフェーンでのデビューは叶わず、当時エールステ・ディヴィジ(2部リーグ)のデ・フラースハップに移籍。2006年から2008年までに70試合以上に出場し、NECへ移籍します。ここでシェーネは125試合33ゴールと、チームのエースとして活躍。今シーズンはじめに、フリートランスファーでアヤックスに加入しました。


特に後半戦はチームに完全にフィットし、渋いけれどMVP級の活躍を見せています。PKキッカーを任されることもあるなど、すでにチームになくてならない存在になっています。







そして、もう一人忘れてはいけないのが、クリスチャン・ポウルセン。シャルケ、セビージャ、ユベントス、リバプールといったヨーロッパの強豪チームを渡り歩いたベテラン。ハードなマークで相手を潰す守備的MFです。


Christian Poulsen


加入当初は、近年は代表からも引退し全盛期を過ぎてしまっており、またアヤックスらしい足元の技術がある選手でもなかったため、昨年のオーイェルのようにベンチからチームを盛り上げるような役割が期待されているのではないかということが言われたりもしました。しかし、シーズン後半になってチームに完全にフィット。守備的MFをControlling midfielderと呼ぶことがありますが、最近のポウルセンはまさにアヤックスのお家芸であるDF含めた低い位置からの丁寧なポゼッションをコントロールする役割を担っています。


常に攻撃的にプレーしたいアヤックスにとって、まず行うべきは攻撃で数的優位を作ること。サイドバックが高い位置をとれるようにするため、キーパーがボールを持ったらまずアルデルヴァイレルトとモイサンデルの両CBがワイドに開き、ブリント、ファン・ラインの両サイドバックを前線に押し出します。しかし、ここで問題になるのが中央のスペース。CBがボールを保持した時に縦のコースが消されている場合、中央のサポートがなければやり直しができなくなるし、ミスがあると一気に中央突破される可能性があります。ここを埋めるのが守備的MFの役目。昨シーズンはヤンセンやアニタがCBの間まで下がってきて、ボールを散らす役目を担っていましたが、ポウルセンも最近はこういった役割をこなしています。PSV戦では特にこの役割がバッチリはまっていました。



アヤックスは若いチーム。それゆえにエリクセンやフィッシャーといった若い才能に注目が集まりがちですが、経験豊かなこの二人がいなければここまで安定したシーズンを過ごすことはできていないでしょう。


残り3試合。きっちり全勝して3連覇を果たし、来シーズンこそはヨーロッパで結果を残してほしいものです。また、来シーズンは怪我でトップチームでの試合から離れている左サイドバックのボイレセンや、今シーズン加入したアンデルセンといった他のデンマーク人選手の活躍も見ることができるといいですね。