2013年5月19日日曜日

Eredivisie Kampionen #32


2012-13シーズンのエールディヴィジはアヤックスの優勝で幕を閉じました。


アヤックスはこれで32回目のリーグ制覇。フランク・デ・ブール監督は就任後3連覇の偉業を成し遂げました。これまでにオランダリーグ3連覇を達成したアヤックス監督は、フランク・デ・ブール以前には2人のみ。これでデ・ブールはリヌス・ミケルスとルイス・ファン・ハールという偉大な監督と同じリストに名を連ねることになりました。

最終的には、盤石と言える戦い方でシーズンを締めくくったアヤックス。圧倒的な攻撃力を爆発させた一方で勝負弱さを露呈した2位のPSVと比べると、安定した守備できっちりと勝利を重ねてきたという印象です。


今シーズン文句なしにアヤックスのMVPとなったのはダレイ・ブリント。アヤックスの年間最優秀選手(Ajacied van het Jaar)に選ばれ、各紙が選ぶエールディヴィジのベストイレブンにも軒並み名を連ねる若き左サイドバックの急成長なくして、今年の優勝はありえなかったと思います。シーズン当初は契約延長せずフリーで出て行くのでは、と噂もされるような状態でしたが、シーズン途中にはオランダ代表にも選ばれ、怪我がちなボイレセンを差し置いて完全に左サイドバックのファーストチョイスになった印象です。







そして、今シーズンはポウルセン、シェーネ、アンデルセンと3人のデンマーク人を獲得。エリクセンとボイレセンと合わせて、デンマーク人が欠かせない存在となっていました。シェーネは個人的にはブリントと並ぶくらいのMVP級の活躍を見せた選手だと思います。重要な局面でのゴールだけでなく、細やかな技術で多くのチャンスを演出していました。そして新星フィッシャーの大活躍はご存知の通り。アヤックスの中では若手の最優秀選手(Talent van het Jaar)に選ばれました。今後、間違いなく欧州トッププレーヤーの一人として成長していくことでしょう。


ポウルセン、フィッシャー、シェーネの3人が英語で今シーズンを振り返っている動画がこちら。







個人的には、ポウルセンの以下の言葉が印象的でした。


「僕は1対1に強いフィジカルなプレーヤーではなくて、コンビネーションを創り出すのがうまい選手でもある。ほとんどの試合でボールポゼッションが60%を超えるようなチームでプレーできるのは本当に楽しいよ。去年はフランスの小さなクラブで、状況が違ったからね。」


当初はテクニックに欠けた荒々しい選手なのかと思っていましたが、蓋を上げてみればカードを一枚も貰わないでシーズンを終えたポウルセン。後半につれて徐々にチームにフィットして、冷静なディフェンスで相手の攻撃の芽を摘んだだけでなく、チームのボールポゼッションに大きく貢献することとなりました。来シーズンもアヤックスでチームを引っ張って欲しいです。



さて、今シーズンでエリクセンとシーム・デ・ヨングは移籍が濃厚。他にもアルデルヴァイレルトも移籍が噂される選手のひとりとなっています。

エリクセンはドルトムントやリバプールへの移籍が噂され、特に司令塔ゲッツェがバイエルン・ミュンヘンに移籍となるドルトムントについてはエリクセン自身「プレーしたいチーム」と発言もしており、またデ・ブールとクロップ監督も最近仲がいいようで、移籍の可能性が高まっているところです。

シームは以前からニューカッスルへの移籍が噂されていましたが、本人は弟のルーク・デ・ヨングがプレーするドイツでプレーしたい気持ちがある模様。最近ではシャルケのフンテラールがシームはシャルケに合っていると発言したという報道もあります。

トビーもニューカッスルやトッテナム、アーセナルなど様々なチームへの移籍がありますが、最近ではASローマがトビーへの問い合わせを行ったという報道もあります。



エリクセンとシームが抜けると、MFの選手層がどうしても薄くなってしまうため、AZからアダム・マヘル、フィテッセからファン・ヒンケルの獲得が噂されています。ただ、AZのフェルベーク監督は、「マヘルはヨーロッパのビッグクラブでプレーする用意ができている。国内に留まる必要はない」とも言っており、またAZが高額な移籍金をマヘルに設定することが考えられるので、彼がアヤックスに来るかどうかは微妙なところです。間違いなくオランダでNo.1の若手タレントなので、彼が来たらアヤックスのサッカーがさらにおもしろくなることは間違いないのですが…。



ただ、最近では若手のタレントを相次いで獲得しており、ナイジェリアの17歳Moses Daddy-Ajala Simon、アイスランドの16歳ストライカーOttar Magnus Karlssonの加入がほぼ内定、16歳のDF、Nathan Layderをクラブ・ブルッヘから獲得、そしてオランダU-18代表にも選ばれている右ウイング、Anwar El-Ghaziとの契約にも至っています。すでにチームに加入しているイラン・ボッカラやルーカス・アンデルセンなどの若手とともにアヤックスの未来を作っていって欲しいですね。




来シーズンこそはチャンピオンズリーグでの結果を残したいアヤックス。どうなるか楽しみです。







2013年4月21日日曜日

3連覇に近づくアヤックスと"Danish Dynamites"


アヤックスはエールディビジ第31節を終え、勝ち点67で首位に立ちます。2位PSVは勝ち点63、今晩のフィテッセ対フェイエノールト戦でフィテッセが勝った場合、フィテッセが勝ち点64で2位に踊り出る可能性もあります。


開幕当初はPSVが圧倒的な戦力を持っていると思われており、実際ものすごい勢いで得点を重ねていたPSVですが、大事な局面で守備の脆さを見せてしまい、結局未だに2敗を保つアヤックスが首位を守る展開になっています。


第30節のアヤックス対PSVの頂上決戦は3-2でアヤックスの勝利に終わり、この結果アヤックスは優勝をグッと引き寄せたことになりました。31節のヘーレンフェーン戦は1-1の引き分けに終わったものの、残り3試合NAC、ヴィレムII、フローニンゲンと格下相手の試合が続くため、よほどの波乱がなければこのままアヤックスの優勝となりそうです。


今シーズンのアヤックスでセンセーショナルな活躍をしたのは、間違いなくヴィクトール・フィッシャー。デビューシーズンながらリーグ戦8ゴールを記録し、18歳ながらチームの主軸として活躍しています。特にNEC戦でのこのスーパーゴール。






同じくデンマーク出身のクリスチャン・エリクセンは、好調・不調の波は激しいものの、CLやPSV戦など重要な局面で活躍し、ヘラクレス・アルメロ戦ではフィッシャーに負けじとスーパーゴールを決めてみせました。




若く、才能あふれるこの二人に注目が集まっています。エリクセンは今夏の移籍を特集した雑誌では必ずといっていいほど名前が出てきます。


しかし、今シーズン素晴らしい活躍を見せているデンマーク人が、あと二人います。この二人の活躍がなければ、今アヤックスが首位に立っていることはないでしょう。


一人目は、ラッセ・シェーネ。NECから今シーズン加入した26歳は、今シーズン29試合に出場し6ゴールを決めています。中盤の攻撃的な位置が主戦場ですが、守備的MFを務めることもでき、また右ウイングでのプレーもできるユーティリティープレーヤー。正確な技術から中盤のポゼッションに貢献し、粋なパスでゴールをアシストする。そして決定的な場面で思いきりの良いミドルシュートからゴールを奪えるという、状況判断に優れたインテリジェントで頼もしい選手です。

Lasse Schone

シェーネはデンマーク出身ですが、16歳の時からヘーレンフェーンのユースに所属。しかしヘーレンフェーンでのデビューは叶わず、当時エールステ・ディヴィジ(2部リーグ)のデ・フラースハップに移籍。2006年から2008年までに70試合以上に出場し、NECへ移籍します。ここでシェーネは125試合33ゴールと、チームのエースとして活躍。今シーズンはじめに、フリートランスファーでアヤックスに加入しました。


特に後半戦はチームに完全にフィットし、渋いけれどMVP級の活躍を見せています。PKキッカーを任されることもあるなど、すでにチームになくてならない存在になっています。







そして、もう一人忘れてはいけないのが、クリスチャン・ポウルセン。シャルケ、セビージャ、ユベントス、リバプールといったヨーロッパの強豪チームを渡り歩いたベテラン。ハードなマークで相手を潰す守備的MFです。


Christian Poulsen


加入当初は、近年は代表からも引退し全盛期を過ぎてしまっており、またアヤックスらしい足元の技術がある選手でもなかったため、昨年のオーイェルのようにベンチからチームを盛り上げるような役割が期待されているのではないかということが言われたりもしました。しかし、シーズン後半になってチームに完全にフィット。守備的MFをControlling midfielderと呼ぶことがありますが、最近のポウルセンはまさにアヤックスのお家芸であるDF含めた低い位置からの丁寧なポゼッションをコントロールする役割を担っています。


常に攻撃的にプレーしたいアヤックスにとって、まず行うべきは攻撃で数的優位を作ること。サイドバックが高い位置をとれるようにするため、キーパーがボールを持ったらまずアルデルヴァイレルトとモイサンデルの両CBがワイドに開き、ブリント、ファン・ラインの両サイドバックを前線に押し出します。しかし、ここで問題になるのが中央のスペース。CBがボールを保持した時に縦のコースが消されている場合、中央のサポートがなければやり直しができなくなるし、ミスがあると一気に中央突破される可能性があります。ここを埋めるのが守備的MFの役目。昨シーズンはヤンセンやアニタがCBの間まで下がってきて、ボールを散らす役目を担っていましたが、ポウルセンも最近はこういった役割をこなしています。PSV戦では特にこの役割がバッチリはまっていました。



アヤックスは若いチーム。それゆえにエリクセンやフィッシャーといった若い才能に注目が集まりがちですが、経験豊かなこの二人がいなければここまで安定したシーズンを過ごすことはできていないでしょう。


残り3試合。きっちり全勝して3連覇を果たし、来シーズンこそはヨーロッパで結果を残してほしいものです。また、来シーズンは怪我でトップチームでの試合から離れている左サイドバックのボイレセンや、今シーズン加入したアンデルセンといった他のデンマーク人選手の活躍も見ることができるといいですね。



2013年3月3日日曜日

アヤックスのEL敗退とエールディヴィジの衰退


アヤックスは先日行われたヨーロッパリーグ一回戦、ステアウア・ブカレストに敗北しヨーロッパの舞台から姿を消しました。アムステルダム・アレナにおける第一戦は2-0で勝利したものの、敵地に乗り込んだ第二戦では90分戦って0-2、延長線でも決着がつかずPK戦で敗北が決定しました。

アヤックスはこれで二年連続でチャンピオンズリーグのグループリーグ敗退からヨーロッパリーグに回り、一回戦で敗退していることになります。

もっとも、去年は一回戦の相手はマンチェスター・ユナイテッド。それでも敵地オールド・トラッフォードで勝利を収めた実績もあるだけに、明らかに格下のステアウア相手の敗退は失望的な結果と言わざるを得ません。今年のヨーロッパリーグ決勝はアムステルダム・アレナで行われる予定なだけに、是が非でも勝ちたかったアヤックス。しかし肝心な所での勝負弱さが出てしまい、願いは叶いませんでした。

その後のエールディヴィジの試合でもアヤックスは苦戦。EL後のADOデンハーグ戦では圧倒的に攻めながらも勝ちきれず1-1でローダJC戦に続く引き分け。昨日のトゥエンテ戦では2-0で勝利と持ち直したものの、首位PSVとの勝ち点差2をひっくり返すことができるかどうかは微妙なところです。

アヤックスの敗退に伴い、エールディヴィジのチームはチャンピオンズリーグからも、ヨーロッパリーグからも、姿を消したことになります。エールディヴィジのクラブは、小野伸二が所属していたフェイエノールトが2002年にUEFAカップを制して以降、欧州でタイトルを取ることができていません。今回は、アヤックス自体の弱体化と、エールディヴィジ全体の衰退について考えてみたいと思います。


アヤックスの危機

アヤックスは1994-95シーズンに欧州を制覇しました。当時のアヤックスは若手とベテランが融合し、ユースアカデミーが生んだ10年に一人といったような逸材がたまたま奇跡のように揃っていたからこそ結果を残すことができました。しかし、ボスマン判決以降、オランダのクラブからの選手の流出は止まることがなく、エールディヴィジは苦しい時期を迎えています。


アヤックスのユース育成は全世界に影響を与えています。それ自体は素晴らしいことですが、国内外問わずアヤックスのモデルをコピーするチームが増えてきました。現在もアヤックスは多くのタレントを輩出していますが、圧倒的な才能を持ったオランダ人のタレント―例えばクライファート、スナイデル、ファン・デル・ファールトのような―を輩出することはできていません。

オランダ代表の各カテゴリーに、何人のアヤックスの選手が含まれているのか以下の表にまとめてみました。


【アヤックス所属選手の人数】
カテゴリーGK DF MF FW 
Oranje1 2 0 0 
Jong Oranje0 0 00
Beloften0 3 0 1 
Oranje onder 191 0 1 1 
Oranje onder 171 4 1 1 
合計3 9 2 3 


※それぞれのカテゴリーの説明↓
  • Oranje…フル代表。フェルメール、ブリント、ファン・ラインが選出。2013年2月6日親善試合イタリア戦。
  • Jong Oranje…オランダ代表リザーブチーム。2月5日クロアチア戦。フィテッセのファン・アーンホルト、PSVのワイナルダム、ボルシア・メンヘングラードバッハのルーク・デ・ヨングなどが選出
  • Beloften…Jong Ajaxなどのリザーブチームが集結するリーグ戦からの選抜。2月6日アイルランド戦。
  • Oranje O19…19歳以下代表。2月6日スコットランド戦。
  • Oranje O17…17歳以下代表。ポルトガルで行われる4カ国対抗戦へのメンバー。

明らかにDFばかりというのがわかります。もちろんDFのタレントが出てきているのはいいことではあるのですが、MFやFWでオランイェレベルの選手が出てきていないのは非常に気にかかります。それに比べるとフェイエノールトはクラシー、フィルヘナ、ボエティウス、アチャバルなど中盤・前線に多くの素晴らしい若手選手を揃えています。

ちなみに以下がそれぞれのカテゴリーで選ばれているMF・FWの選手です。
  • Beloften…ヨディ・ルコキ(FW)
  • O19…アブデルマレク・エル・ハスナウィ(MF)、ニック・デ・ボント(FW)
  • O17…メルフィン・フィッセルス(MF)、ヤメス・エフモルフィデス(FW)

この他にも暗いニュースはいくつかあります。昨年決勝まで進出したNextGenシリーズですが、今年はベスト16で敗退。昨年はフィッシャーやクラーセンがオランダ国外のメディアでも注目を集めましたが、今年はそこまで注目される選手がいなかったことも気になります。


暗い話題ばかりに触れるのもなんなんで、明るい側面にも触れておきます。O19については、プレセレクションにはGKで選ばれたミッキー・ファン・デル・ハート、MFエル・ハスナウィとFWデ・ボントの他にもFWダンゼル・グラーフェンベルフ、MFシナン・ケスキン、GKピーテル・レーヴェンブルフ、FWクエンシー・メニグが選ばれています。ちなみにNextGenシリーズのHPではメニグが注目選手として紹介されていたりもします。

ただ、いずれにせよ、10年に一度のスターレベルの選手が出てきているわけではないのが現状です。今年はフィッシャーがブレイクしていますが、彼も純粋な生え抜きとは言えない選手。スナイデルのように、8歳の頃からアヤックスのユースで育ってきたようなオランダ人スター選手は、残念ながら出てきていません。


エールディヴィジの抱える問題

よく言われるように、エールディヴィジのすべてのクラブの予算を合わせても、レアル・マドリーの予算には及びません。そして各クラブの財政難は、近年特に顕著です。

2010年、120年の歴史を誇るオランダ最古のクラブ、ハーレムが破産しました。2011年にはRBCローゼンダール、そして2012年にはAGOVVが破産。2009-2010シーズンにオランダの全クラブで計上された負債総額は約100億にもなりました。

KNBV(オランダサッカー協会)はUEFAのファイナンシャル・フェアプレー制度に合致する形で、より厳格なライセンス制度を導入し、クラブの財政状況に関する調査を行いました。この制度の元、KNBVはオランダの各クラブに定期的な財政状況の報告を義務付け、各クラブを財政的に「不適切」・「適切」・「素晴らしい財政状況」の3カテゴリーに分類しました。この結果2010-11シーズンにおいて、13のクラブが「不適切」のカテゴリーに分類されることとなりました。

しかしながら、少しずつ状況は改善されています。2011-12シーズンにおいて「不適切」カテゴリーのクラブは6にまで減りました。

さらに、2012年、FOXが10億円以上とも言われる巨額で、12年間分のエールディヴィジの放映権を獲得。これによって各クラブの放映権料による収入が増えることが期待されています。


最後に

いずれにせよ、短期間でアヤックスやエールディヴィジの苦境が改善される見込みはありません。アヤックスの場合、今夏はエリクセンの放出がほぼ決定的なので、戦力のさらなるダウンは免れませんし、エールディヴィジのクラブが欧州で結果をコンスタントに残せるようになるには長い時間が必要でしょう。アヤックスについては、まずはリーグ3連覇、そして来季こそはCLでグループリーグを突破してほしいですね。


Nick de Bondt







2013年1月26日土曜日

ダフィー・クラーセン ― De Nieuwe Bergkamp


先日のクラシケルでは、フィッシャーのセンセーショナルな2ゴールもあり見事勝利。カップ戦含めると既に今シーズン7ゴールを決めているフィッシャーへの注目はますます高まり、本格的にブレイクした感があります。(UEFAもウェブサイトで彼についての記事を載せていました→http://jp.uefa.com/memberassociations/association=ned/news/newsid=1913253.html)


しかし、アヤックスの注目の若手は、もちろんフィッシャーだけではありません。今日フォーカスするのは、昨シーズンデビューしたユース出身のMF、ダフィー・クラーセン。現在負傷中ですが、1ヶ月程度で復帰が見込まれるという報道もあるこのプレーヤーについて、少し書いてみたいと思います。







1993年、アムステルダム近郊のヒルベルサム(Hilversum)で生まれたクラーセンは、2004年、11歳のときにアヤックスにスカウトされ、そこからアヤックスのユースアカデミー、De Toekomstでプレーし始めます。


彼の名が知られるようになったきっかけは、間違いなく去年のNextGenシリーズでしょう。アヤックスユースの10番を背負い、キャプテンとして活躍した彼は、フィッシャーなどのFWに絶妙なパスを送り続けただけでなく、自らも得点を決めてチームの準優勝に大きく貢献しました。

エールディビジデビューは、昨シーズンのNEC戦。投入されてから1分も経たないうちに鮮やかなデビューゴールを叩きこみ、アムステルダム・アレナに衝撃を残します。ちなみにデビュー戦でゴールを決めた選手のリストにはクライフ、ファン・バステン、クライファートなど錚々たる名前が並んでおり、こういった事実も彼への期待が集まる理由でしょう。



ポジションは攻撃的ミッドフィルダーで、FWとしてプレーすることもできる柔軟性を持った選手。爆発的な得点力があったり、奇想天外なクリエイティビティーを発揮するようなタイプの選手ではありませんが、アヤックスのユース育成の基礎となるTIPS(Technique, Insight and Intelligence, Personality, Speed)のモデルを体現する選手である、という説明が非常にしっくりくる選手だと思います。

基礎技術に優れたクラーセンは、トラップの精度が高くワンタッチでも正確にボールをさばくことができます。頭の良い選手で、スペースを見つけて走りこみ、パスを受けてリズムを作るプレーが得意。それでいてゴール前では落ち着き払ったプレーを見せ、難易度の高いシュートもしっかりと枠に飛ばします。ちょうどシーム・デ・ヨングのような選手と言えるかもしれませんが、クラーセンはシームよりももう少しパスの技術に長けている印象です。往年の名選手、リトマネンもしくはベルカンプのような万能型の選手。

De Boer: Gunners zagen al Bergkamp II in Davy Klaassen
こちらはプレシーズンのイングランド遠征の際、デ・ブール監督がホテルでノリッチvsアヤックスの試合を見たアーセナルサポーターからクラーセンについての評価を聞いたという記事。そのアーセナルサポーターはクラーセンは「ベルカンプのよう」と評し、彼がエリア上のスペースを非常に上手く使っていたことを称賛したとのこと。


彼が注目を集めている理由は、彼がオランダ人であり、「10番」であること。アヤックスは90年代半ばのような成績を欧州で残すことはなくなったとはいえ、近年も優秀な若手を輩出し続けてきました。記憶に新しいところで言えばフェルトンゲン、そして現チームで言えばエリクセンやフィッシャー。しかしフェルトンゲンはベルギー生まれ、エリクセンとフィッシャーはデンマーク代表です。幼少の頃からアカデミーに在籍し続けるオランダ人選手で、しかも得点を決められる10番タイプの選手は、スナイデルやファン・デル・ファールトを最後に長らく輩出することができていないのが現状です。シーム・デ・ヨングはエールディビジで継続して素晴らしい活躍を見せていますが、オランダ代表には定着することができておらずファンは今でも「次のスナイデル」を探し続けています。


この2月で20歳になるクラーセンは飛び抜けて若いわけではなく、ほぼ同世代のAZのアダム・マヘルやフィテッセのマルコ・ファン・ヒンケルはすでにチームの主軸として活躍し、オランダのフル代表にも選出されています。それでもクラーセンはアヤックスの今後数年を引っ張る選手に成長する可能性を秘めており、デ・ブール監督もその才能を認めています。


2012/13シーズン前半のほとんどを怪我で棒に振り、2試合の出場に留まったクラーセンですが、2月末頃の復帰が期待されています。後半戦、そしてシーム・デ・ヨングやエリクセンがチームを去るであろう来シーズン、クラブの新たな顔として成長していって欲しいと思います。







2013年1月1日火曜日

Gelukkig Nieuwjaar! / Media Polls

あけましておめでとうございます。

このブログ、最初は英語で書いているブログのサブ的な扱いで始めたものでしたが、最近は忙しくて母語の日本語で書くほうが楽というのもあり、今後はこちらの更新を増やしていきたいと思っています。たまには英語ブログの方も更新したいですが。

日々のニュースなんかだと僕よりももっとしっかりとアヤックスの情報を追っていらっしゃるブロガーの方もいると思いますし、今の時代Goal.comみたいなサイトを見てもいいし、いくつかあるアヤックスのファンサイトやオランダの新聞・サッカー誌をGoogle翻訳か何かで翻訳して読んでもいいし、Twitterやfacebookなんかでも気軽に情報は手に入ります。また、僕はどちらかというとAjaciedとしては新参者でもあります。

なので、今年も最新のニュースを追いかけるというよりは、ちょっとおもしろい視点からアヤックスやエールディヴィジのことをグダグダと語っていこうと思います。今年はサッカーの戦術論にもう少し詳しくなったり、オランダ語も少しは読めるように勉強したいと思っています。

見てくれている人が多いとは言えないブログですが(汗)、何かの拍子で見て下さった方は、今年もよろしくお願い致します。

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さて、アヤックスのファンサイト、Ajax Showtimeにはファンによる投票を行うページ(Media Polls)があります。最近の投票で、比較的投票数が多くて面白いなと思ったものをいくつか翻訳してみます。



  • アヤックスは次の冬の移籍市場で補強をするべき?
はい1340票73%
いいえ492票27%
多くの人が何らかの補強が必要と感じているようですね。今シーズンの終わりにエリクセン、シーム、トビーあたりがごっそりと抜けるような事態も想定されるので、シーズン終了後も見据えた補強がこのタイミングで必要なのかもしれません。



  • ファン・デル・サールは適切な人材?
はい(真のAjaciedだから)1930票85%
いいえ(リーダーではないから)140票6%
いいえ(別の理由で)197票9%
基本的に、クライフの意向に沿って行われたクラブ出身プレーヤーを中心に据えた人事改革はファンからは理解を得ているようです。「真のアヤックス人」(een echte Ajacied)という表現はフランク・デ・ブールに使われているのも見たことがありますね。



  • アヤックスにはサミュエル・アルメンテロス(22)と契約してほしい?
はい(冬に移籍で)1029票37%
はい(夏にフリーで)1043票38%
いいえ、いい選択ではありません702票25%

スピッツ(ストライカー)の獲得候補として昨年夏から噂になっているヘラクレス・アルメロのサミュエル・アルメンテロス(Samuel Armenteros)は1990年生まれの22歳。スウェーデン生まれのストライカーは今シーズン現時点まで17試合で9ゴールと好調を維持しており、来夏には契約満了でフリーになってしまうため、冬の移籍も十分ありえる状況。テクニックがありアクロバティックなゴールを決められる選手なので、前線の活性化のためにはいい選択かもしれません。



  • アヤックスはもう一人スピッツを獲得するべき?
はい(ニクラス・ヘレニウス)989票39%
はい(サミュエル・アルメンテロス)471票19%
はい(上記以外)269票11%
いいえ797票32%

しかし、この質問ではアルメンテロスよりもデンマークのオールボルグでプレーするニクラス・ヘレニウス(Nicklas Helenius)の人気が高い模様。ヘレニウスにはチェルシー、マンチェスター・シティ・フルハムなどのプレミアリーグのクラブの他、フェイエノールトやヴォルフスブルクも興味を示しているとの報道があり、すでにデンマーク代表にも招集されている期待の若手。エリクセンも彼について「非常に才能のあるプレーヤー」と語っています。195cmの長身なので、加入すればチームのプレーの幅も広がりそうですね。ちなみにオールボルグからは今シーズンルーカス・アンデルセンが加入しています。



  • 怪我をしている選手がいない時、誰がアヤックスのスピッツであるべき?

ダニー・フーセン374票16%
コルベイン・シグトールソン1514票65%
ライアン・バベル277票12%
シーム・デ・ヨング168票7%

1位が圧倒的にシグトールソンなのは順当でしょう。早く復帰して欲しいものです。少し面白いと思ったのは、フーセンがバベルよりも上に来ていることでしょうか。バベルは1年間のみで出ていくことがほぼ間違いないという事情も考慮している人が多いと思いますが、フーセンも徐々にファンの信頼を獲得しつつある選手の一人です。ボールも収まるし、あとはプレーの精度を高めてもったいないミスを減らせば化けるかもしれないプレーヤー。一方でシームは個人的にはスピッツではなく飛び出しに特徴を持ったOMFとして成長して欲しいですね。

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たまに今回取り上げたような面白い投票をしていたりするので、これからもチェックしていこうと思います。












2012年12月30日日曜日

2012/13シーズン前半戦総括




オランダ・エールディビジは前半戦を終え、ウィンターストップに入りました。

アヤックスは現在勝ち点37で、共に勝ち点40のPSVとトゥエンテを追って3位につけています。また、「死のグループ」と形容されたチャンピオンズリーグのグループDでは3位に終わり、ヨーロッパリーグへの出場を決めています。2月14日に決勝トーナメント一回戦のステアウア・ブカレスト戦が待っています。

今シーズンのアヤックスについて少しまとめてみたいと思います。


1.新加入選手

今シーズンの新加入選手は以下のとおりでした。

  • ニクラス・モイサンデル(CB)
  • クリスチャン・ポウルセン(DMF)
  • トビアス・サナ(RWG/LWG)
  • ラッセ・シェーネ(OMF/DMF)
  • イラン・ボッカーラ(OMF/DMF)
  • ダニー・フーセン(FW)
  • ルーカス・アンデルセン(FW)
  • ライアン・バベル(FW)


このほか、以下の選手がユースから昇格してトップチームでの出場機会を得ています。

  • ヨエル・フェルトマン(CB)
  • ステファノ・デンスヴィル(CB)
  • ミッチェル・ダイクス(LSB)
  • レズリー・デ・ザ(FW)
  • ファビアン・スポルクスレデ(DMF)
  • ヴィクトール・フィッシャー(FW)


アニタ、フェルトンゲン、ヤンセンといった中心選手がチームを去った今シーズンは、現実的な見方をすれば戦力はダウンしたと言わざるを得ないでしょう。総じて、高いパフォーマンスを見せている新加入選手はCBのモイサンデルとMFのシェーネくらいのもののような気がします。

ポウルセンは単純なミスが多く安定したパフォーマンスを見せることができておらず、サナは加入当初の衝撃を見せ続けることができませんでした。バベルは出場時にはターゲットマンとしてある程度の活躍を見せましたが、得点は2点のみで怪我で離脱ということで、WSDは「まったくの期待はずれ」といった表現までしていました(個人的にはこんなものだろうという印象なので期待はずれってことはないと思っていますが)。

フーセンやフィッシャーは経験不足感が否めませんでしたが、あの年齢でここまでやれてることは誇っていいことだと思うので、今後に期待でしょうか。モイサンデルはCLでも点決めたし、徐々にフェルトンゲンがやっていたような後方からゲームメークをするような役割を担いつつあるので、期待。個人的には、ボッカーラ、アンデルセン、スポルクスレデあたりに今後出場機会が増えていくことを期待しています。


2.前シーズンから引き続き在籍していた選手



際立ったパフォーマンスを見せたのはダレイ・ブリント(LSB)でしょうか。生粋のAjaciedながら今までファンからも散々いらないと言われ続けてきたちょっと可哀想な選手ですが、ユース上がりのダイクスとのポジション争いに勝利し、エールディビジでは18試合に出場しています。一対一で簡単にやられることも少なくなったし、持ち前の確かなテクニックを武器にした攻撃参加も地味ながら効果的だった。細かなパスをつなぐのがうまい選手なので意外とボランチあたりでも使えるんじゃないかと思ったり。あとはゴールやアシストがあればもっと乗って行きそうなので期待したいけど、契約延長するかどうかよくわからないのでもしかしたら1月に出ていく可能性も。

今シーズンチームを去ったフェルトンゲンからキャプテンを引き継いだのはシーム・デ・ヨング。NUsportによってエールディビジのファン投票人気ナンバーワンに選ばれ(※1)、かつVoetbal Internationalによって得点数とアシスト数を合計した結果「2012年で最も価値のあるプレーヤー」に選ばれました(※2)。CLでシティーに対して1勝1分の成績を残せたのは間違いなく彼のおかげです。アレナでファンラインのクロスを渾身のハーフボレーで叩き込んだ同点ゴールは個人的に今のところ今シーズンで一番興奮した瞬間でした。ここぞという時に必ず点を決める稀有な才能の持ち主。あとは安定したパフォーマンスを出せるようになれば…。とても好きな選手ですが、さすがにこんだけずっと出場しっぱなしよりは調子悪い時は下げて他の選手に機会与えてもいいんじゃないかと思います。

エリクセンは大事なところでゴールも決めているし、CLでもある程度活躍できたし、少しずつレベルアップしている感はあります。もはや欧州で注目の若手という話になると必ず出てくる選手。今シーズン限りかもしれませんが、応援したいです。

逆に少し気になるのはブーリフテルとトビー。ブーリフテルは、昨シーズン怪我をする前まではすごい選手だと思っていたけど、少し迫力がなくなっている感じがしますね。やはりウィングといえどもゴールが少ないのが気になります。復調に期待。トビーも安定感が出てきた気はするんですが、フェルトンゲン並みのスーパーなCBにはまだなれていない感じがしますね。来シーズンもアヤックスに留まりたいといったことを言っていたので、今期と来期でさらに成長して欲しい選手。


3.怪我人について

昨シーズンほど悲惨な状況ではないかもしれませんが、今シーズンも怪我に悩まされているアヤックス。シグトールソン、ボイレセンがいればチーム力は一段上がると思いますし、シーズン序盤で良いプレーを見せていたセレロが怪我をしたのは非常に残念でした。また、若手としては個人的に好きな選手でもあるクラーセンが怪我をしているのは残念。今年はもっと出場機会を増やして飛躍の年にして欲しかっただけに、これによって成長が止まってしまわないことを祈るばかりです。


4.放出されそうな人々

今シーズンはほとんど出場機会を得ることができていないスレイマニは、オーフェルマルスSDが「1月に出ていくのがベスト」と公言。デ・ブール監督の構想外になっていることが明らかになりました。いい選手なのでしょうけれど、怪我がちだし、何よりも財政的な負担が大きいことがネックになっているのでしょうか。確かにファンからしてみても、スレイマニよりもルコキ、フィッシャー、フーセン、アンデルセンなどの若手FWが成長していく姿を見たいというのが本音かもしれません。

また、昨シーズンはNACブレダにローンで借り出されていたロリー・ボネファチアですが、今シーズンのエールディビジでは出場機会を得ることができておらず、1月の移籍に向けてローダと交渉が進んでいる模様。プレシーズンでは少し試合に出ていましたが、敏捷性があり足元の技術もあってなかなか味のあるボランチだと感じました(CBもできるみたいです)。アニタに少し似てるかなと思ったので期待したんですが…ちょっと残念です。

また、上でも触れましたがブリントが残るかどうかは不明瞭な様子です。もしブリントが放出されるとなると、左サイドバックはダイクスとコッペルスになりますが、ボイレセンの怪我が長引く中この2人だけでシーズンを乗りきるとなるとかなり不安ですね…。ちなみに昨シーズンはそれなりに出場機会を得ていたコッペルスにもローン移籍の噂はある模様。


5.前半戦総括

CLについては、「ああやっぱりこのグループだと勝てないんだな」と思う一方で、チーム力の差を考えればシティーを下して3位に入り込めたことは大きな成果ではないでしょうか。リーグについては、結局首位まであと勝ち点3なので、十分な結果を残していると思います。

ただ、低調な内容の試合が多いことは非常に気になりますね。シティー戦みたいにサイド攻撃ばバッチリはまれば面白いサッカーができるんですが、昨シーズンのような迫力のある後方からのビルドアップやスペクタクルなプレーは少なくなっているような気がします。ヤンセンのクリエイティビティーがなくなり、フェルトンゲンの攻撃参加がなくなり、そしてフォアリベロとして動きまわるアニタを中心としたポゼッションができなくなり…といったように、戦術的に補完すべきポイントが多くあり、細部で自分たちのスタイルを確立するのに苦しんでいた印象でした。

ディフェンスの脆さは相変わらずなんですが、得点力不足が顕著でしたね。中盤を支配できても決められない、もどかしい試合が多かったと思います。あれだけゲームを支配していたら、もっと圧倒的に勝たなければいけないと思うのですが、そういう意味では退屈な試合が多かった気がします。トゥエンテ、フェイエノールト、PSVなど上位陣相手にはいい試合をしていたので、下位チームには圧倒的な差を見せてリードした上で選手もどんどんローテションして欲しいと思います。

補強が必要かどうかはよくわかりませんが、3連覇に向けてアヤックスらしいサッカーを見せ続けて欲しいですね。そして、アムステルダム・アレナでのヨーロッパリーグ決勝へ向けて、快進撃を見せて欲しいと思います。

それでは良いお年を。




※1
http://www.nusport.nl/eredivisie/2962631/siem-jong-sympathiekste-speler-eredivisie.html

※2
http://www.vi.nl/nieuws/233310/De-Jong-troeft-Malki-en-Mertens-af-als-MVP-van-2012.htm

2012年11月24日土曜日

アヤックスの未来とヴィクトール・フィッシャー



ブログを書いていない間に様々なことが起きました。チャンピオンズリーグ・マンチェスター・シティ戦での勝利、デ・カイプで引き分けに終わったクラシケル、フィテッセ戦の敗北による無敗記録の終了、ファン・デル・サールのマーケティング・ディレクター就任など。


今回フォーカスするのは、若干18歳、アヤックスの若き期待の星、ヴィクトール・フィッシャー(Viktor Fischer)です。Viktor Fischer - Wikipedia


フィッシャーはウイングとしてもCFとしてもプレーでき、相手ディフェンスを切り裂くシンプルで効果的なドリブルが特徴的な選手。パスセンスや得点感覚にも優れており、特にGKとの一対一では上手さが光ります。デンマーク代表にもすでに選出されています。



フィッシャーは10月20日、ヘラクレス・アルメロ戦でエールディビジデビューを果たし、KNBVベーカー杯のONSスネーク戦でトップチームにおける初ゴールをマークしました。2-2の引き分けに終わったチャンピオンズリーグ、アウェーでのマンチェスター・シティ戦でも終了間際に交替で出場を果たし、チャンピオンズリーグデビューも飾っています。



彼のエールディビジ初ゴールは、彼にとって初のスターティングメンバー入りの試合ともなったPECズヴォレ戦でした。この試合でフィッシャーは2得点をマークすることとなります。



90年代中盤の黄金期の後、長らく低迷しているアヤックスですが、ここ数年はクラブのレジェンドであるヨハン・クライフの哲学に沿ったクラブ運営を行うことによって、組織改革がなされています。今では、監督のフランク・デ・ブールを筆頭にユースチーム監督のウィム・ヨンク、アシスタントコーチのデニス・ベルカンプ、スポーツ・ディレクターのマルク・オーフェルマルス、そして新たに就任したマーケティング・ディレクターのエドウィン・ファン・デル・サールといった、クラブの黄金期を支えたオランダ人たちが要職に就いています。彼らの目指すのはクライフの哲学の実現。すなわちユース育成をクラブの根幹とし、伝統的な4-3-3でワイドにサイドを使ってボールを保持する攻撃的フットボールを行うことです。


だからこそ、ユース出身選手の活躍は不可欠。クライフを神格化するアムステルダムのファン達にとって、ユース出身選手が活躍するということは、試合結果やリーグ順位がどうであれ、クラブが正しい方向に向かっていることを示すことになるのです。


そんなクラブの姿勢を表す印象的なエピソードを紹介している記事がこちら。
AJAX AND THE ART OF BICYCLE MAINTENANCE



11月3日、肌寒いアムステルダム・アレナでアヤックスは0-2でフィテッセに負けようとしていました。アヤックスはオランダ王者。ファンがこの内容に満足するはずはなく、ブーイングと指笛が鳴り響きます。


そんな中ベテランのポウルセンに替わってピッチに入ってこようとしていたのは、18歳のフィッシャー。ブーイングは止まり、スタジアムを楽観的な雰囲気が包み込みます。


ファン達は、フィッシャーがハットトリックを決めてくれることを期待しているわけではありません。今すぐには結果を出せなくてもいい。クライフも言うように、トップクラスのプレーヤーを育てるのには時間がかかるから。アムステルダムのファン達はそのことを世界中のどのクラブのファンよりもよく知っています。


Don't worry about a thing, 'cause every little thing gonna be alright.
大丈夫、心配しないで。どんな小さなことまでも、きっとうまくいくから。
(Bob Marley - Three Little Birds)





これはフィッシャーに限った話ではありません。今もクラブは優秀な若手を多く抱えています。フィッシャーを筆頭に、ファビアン・スポークスレデ、ルーカス・アンデルセン、イラン・ボッカーラ、ダフィー・クラーセン、ダニー・フーセンといった選手たちが、往年の名選手たちの指導の下で、着実に実力を蓄えています。


De wereld van Fischer
フィッシャーは、アムステルダム川のほとりにある美しいホストファミリーの家で朝目覚め、学校の勉強を行い、昼になるとバッグに荷物を詰め込み、自転車に15分ほど乗って、クラブ施設のDe Toekomstへ向かいます。そこでフランク・デ・ブールから戦術的な指導を受け、デニス・ベルカンプからどうやって得点を決めるべきか教えてもらえるのです。若手選手にとってこんなに素晴らしい環境があるでしょうか。



焦らず、アヤックスでじっくり成長してくれればいい。近い将来、彼らは必ずやアヤックスをリーグ優勝に導き、チャンピオンズリーグの決勝トーナメントで結果を残せるチームに再生してくれる。そんな淡い期待を、アヤックスのファンは抱き続けています。



De Toekomst、オランダ語で「未来」を表すこの言葉。苦しい時期があっても、自分たちの信念を曲げずにいれば、必ずや未来はある。フィッシャーがいつの日か、チャンピオンズリーグ決勝トーナメントの舞台で、何十億もの金をかけてできあがったマンチェスター・シティのようなチーム相手に得点を決める姿を、誰もが待ち望んでいます。



もちろん楽観的になってばかりはいられない。ディフェンスの脆さや決定力不足が今シーズンは特に目立ち、PSVやトゥエンテとの差はなかなか縮まらない。リーグ3連覇ができるかどうかは微妙なところです。しかしそんな中でも希望はある。若きフィッシャーの活躍が、それを示してくれています。